幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「あいつ院卒だから2つ上の30。…ほら、あんまり話してると遅刻するぞ」
結局、涼介に急かされて会社に向かった。
今日はガーターリングの試作品を小夜子さんに最終チェックしてもらって、ラッピング資材をフィックスして発注。工場とのやり取りも山下さんが教えてくれると言っていた。やることは盛りだくさんだけど、どれも気の抜けない仕事だ。
苦手なパソコンとも向き合いながら何とか仕事を進めていると、社員の人が涼介の空席のデスクを見て立ち止まっている。
「珍しいですよね。今日は体調不良だそうです」
「えーっ?コンペの資料の相談したかったんだけどな」
小早川さんが事情を説明してる。そんなふうに涼介のデスクを訪れる社員さんが何人もいて、そのうちに小早川さんが携帯を手に取った。
「……いえ、ゆっくり休んで頂きたいんですが………ご連絡いただけるんですか?ありがとうございます。すみません。」
どうやら涼介に電話をしてるみたいだった。あんなに辛そうだったのに、会社を休んでも仕事の電話がかかってくるんだ。
「あの、良かったらお見舞いに…ご飯とか大丈夫ですか?……そうですか、お大事にしてくださいね」
電話を切った小早川さんがはーっと溜め息をつく。
「何見てるんですか?」
「や、あのっ。涼介具合悪いから仕事の話はちょっと待ってあげた方が…」