Sign of Love
 後ろからすっと手が伸びる。栞那とわたしの間にある未処理封筒の山に、送られてきたばかりの封筒を数枚重ねていく。手を見ただけで誰だか分かってしまう。システム課の坂巻さんだ。

「お願いします」
 それだけ言い残し、坂巻さんはパーテーション代わりに置かれている、観葉植物の向こう側に戻っていく。

すっとした体型に合ったシルエットの綺麗なクレリックシャツ。清潔感と落ち着いた雰囲気が好印象で、女性社員の間でひそかに人気がある。

「……坂巻さんが書類全部持ってきてくれれば、私もっと頑張れるのになー」
 栞那は坂巻さんを目で追いながら、わたしにだけ聞こえるように言う。

「またそんなこと言って」
「楽しみがひとつくらいないと、仕事なんてむかつく事ばっかでつまんないし」

「栞那、もうすっかりファンだよね」
「言っとくけど、総務部で坂巻さんのファンじゃないのは華美だけだからね」

 少し前まで『いい人だけど大人しすぎるし華がない』なんて言ってたのに。先週、私が会社を休んでいる間に、栞那の意見がころっと変わっていた。
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