Sign of Love
「……恋愛はお金じゃないなんて言ってたくせに」
「でもあるに越したことはないじゃない? それに、坂巻さんはお金だけの男じゃないしね」

 話しながらも着々と仕事をこなす器用な栞那を見習って、わたしもマウスに右手を乗せる。契約書類の確認と承認もやらなければならないけど、今日中に終わらせなきゃいけない仕事はそれだけじゃない。

朝から組んでいるエクセルのマクロを仕上げて業務システム上にアップしないと、運営部の仕事が回らなくなる。忘れないように、モニターの端に付箋を貼っている。

「しかし謎だよなあ。元々グループ会社で難しい開発やってた人が、本社のシステム課に転籍なんてさ。坂巻さん向こうにいたとき、何かやらかしちゃったのかねー。慎重そうに見えるけど。華美知らない?」

「知らない。でも……人と揉め事起こすようなタイプじゃなさそうだよね」

それに、実務に問題があったわけじゃないのは仕事ぶりから良く分かる。
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