願わくは、雨にくちづけ

「離れてても、煌さんといるみたいで、ちょっと嬉しかったんです、けど……」

(煌さん、どうしたんだろう。やっぱり怒ってるの?)

「男除けになったみたいでよかったよ」

 立花は、思いのほか、新井が伊鈴に迫っているのではないかと察した。

 もし、伊鈴が新井のせいで悲しんだり苦い思いをするようなことがあれば、ただではおかないと嫉妬が暴れ出す。


「他に、なにもなかったんだよな?」

 彼女の瞳が揺らぐのを見逃さず、取り乱すことのないように冷静を保とうと努めた。

(やっぱり、隠し事はしたくない。断ってから打ち明けたって、煌さんは嫌な思いをするかもしれないもの)

 伊鈴のことなどすべて見通すような、立花のまっすぐな視線には敵わない。


「実は、新井くんに告白されたんです」
「……返事はしたのか?」
「タイミングを失っちゃって」

 伊鈴がかぶりを振る。
 すると、すぐに立花は小さなため息をついた。

(そうか、なるほどな)

 言葉にはしないものの、伊鈴がプロポーズにいい返事をくれないのを気にかけていたが、ようやくその理由が分かった気がした。

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