願わくは、雨にくちづけ
伊鈴にも、選ぶ権利はある。
だけど、あまりにも彼女が愛しすぎて、大切なことが見えなくなっていた。
伊鈴が他の男がいいと思えば、そちらを選ぶことも彼女の自由だ。
ただ、そうなるのが怖くて、一緒にいる時はできるだけ自分の腕の中に幽閉していた。
(こんなにも返事をもらえないのは、まだ俺との未来に踏み切れないだけなのか? その新井って男が気になってるから、返事をしてこなかったんじゃないよな?)
「きゃっ! こ、煌さん!?」
切なげで、でもいつになく不機嫌をあらわにしている立花を見つめていたら、突然力強く抱きしめられて息が詰まる。
立花は、彼女の動揺を無視して、荒々しく唇を重ねはじめた。
「んっ、ふぁ……」
呼吸とともに漏れる伊鈴の甘えた声は、一層立花の独占欲を煽る。
(どうしたら、俺だけの伊鈴でいてくれるんだ? 俺との未来を選んでくれる?)
出会ってから今夜まで燃やしてきた彼女への愛情が、これほどないまでに熱を帯びていく感覚がした。