願わくは、雨にくちづけ
優しく丁寧に、傷をつけないように触れて愛してくれる立花が、今夜は噛みつくようなキスをしてくる。
昨夜、縁側で辱めを受けた時だって、触れてくる指先や耳にかかる吐息、劣情に乗っ取られたようなまなざしにさえ、愛が見て取れた。
だからこそ、彼のいうことを聞いた。
言いなりになったのではなく、伊鈴がそうしたくてあんなことを……。
「伊鈴、伊鈴……」
わずかに息を弾ませながら、立花がキスの合間に名を口にする。
目の前にいるのに、まるで遠く離れた場所にいるかのように悲しそうな瞳で見つめてくる。
「愛してる。伊鈴じゃなきゃダメなんだ。こんなに愛しい気持ちになるのはお前だけなんだよ」
甘やかな言葉とは裏腹に、耳朶に歯を立て、穴に舌を入れてくる。遠慮のない吐息がじかに鼓膜を揺らし、卑猥な音が脳を掻き乱すようだ。
「俺だけを見ていて」
「私も、煌さんだけ……んっ……」
常に心にある想いを素直に返したのに、余裕を欠く立花のキスはさらに深くなった。