願わくは、雨にくちづけ
今夜の雨のように、どんどん激しくなるキスが止み、伊鈴は立花にしなだれた。
そして、抱き寄せる手と、うなじや耳に触れるもう一方、そして重なり続ける唇以外、どこにも触れられていないことに疼きを覚えた。
(煌さんに愛されたい……。同じように想ってくれてる?)
立花と過ごすうちに、心に素直に、時に大胆に変わった伊鈴は、さりげなく彼の腰回りに手を回す。
しかし、彼はそっと彼女の手を取って、指を絡めて繋いだ。
「今日は、送るよ」
「……はい」
もどかしさと恥じらいの狭間で、伊鈴は立花に手を引かれ、玄関へ向かった。
(少し冷静になろう。余裕がなさすぎた。……格好悪いな、俺)
このまま、抱いてもよかった。
誰にも邪魔をされない自宅で、雨音を聞きながら彼女に愛を注いでも、誰も文句は言わない。
だけど、今夜は違うと思ったのだ。
荒々しく抱いていられた昨夜が、どこか懐かしくも思う。