願わくは、雨にくちづけ
夜が深くなり、日付が変わるまであと1時間ほど。
ふたりは寝支度を整えて寝室に入った。
揃いの寝間着は、先日デートをした時に買ったもの。コットン100パーセントのパジャマは肌触りがいい。
隣に立花が並んでも、ベッドにはまだまだ余裕がある。
ここで普段ひとりで寝るのが寂しいと言われた時は、胸の奥がきゅんとして、すぐに駆け付けたいくらいだった。
(なにを着ても素敵)
着物姿の立花は凛々しく、文化を重んじている風情のある佇まいが好ましい。
だけど、プライベートの彼はギャップがあって、着物の下に隠されているモデルのような体躯にうっとりとさせられるのだ。
そして、彼もまた、伊鈴のナチュラルな色気にあてられ、瞳を釘付けにさせられる。
(こうしてると、また抱きたくなるな……)
「伊鈴」
「煌さん」
同時に呼びかけ、互いに顔を見合わせて小さく笑う。
立花は伊鈴を腕の中に迎い入れ、そっと壊れ物を抱くように閉じ込めた。
「煌さんから先に言って」
「……もう1回抱きたいんだけど、いい?」
(同じことを考えてたなんて言えない……)
伊鈴は素直に頷いて、彼の甘いくちづけを受け入れる。