願わくは、雨にくちづけ

 「伊鈴から言って」と言われたら、キスをねだるのが精いっぱいだった。
 だけど、求める想いを感じ取ってくれたのか、彼も同じ思いでいてくれたのが嬉しい。

 別々に生きてきて、出会いが本当に運命だったのだと感じられることは他にもたくさんある。
 食の好み、ファッションセンス、笑いのツボや感動するタイミングまで、似通っている点が多いのだ。

 肌を合わせて抱き合うだけで、身体中が彼を求める。吸い付いて離れない互いの感触に身を委ねたくなる。
 そして、どちらからともなくやわらかな唇をむさぼり、呼吸を乱して、見つめ合った。

 求め合うタイミングも、してほしいことも、手に取るように不思議と感じられる。

 甘美な声に吐息を乗せ、隠すことなく感情を伝える彼が、愛おしい。
 自分を欲して、世の中の一切を遮断するかのような独占欲をむき出しにする彼が、もっと欲しい。


「ずっと一緒だ。なにがあっても、俺はお前を手放したりしない」

 愛と欲をたっぷりと浴びせた立花は、ギュッと彼女を抱きしめ、果てた息を乱しながらキスをした。

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