願わくは、雨にくちづけ
「すぐにとは言わない。これは、伊鈴の気持ちが決まった時につけてほしい」
立花がいつの間にか用意していたプレゼントは、婚約指輪だった。
6本爪にセッティングされた大きなダイヤモンドと、パヴェリングが見事なまでに煌めいている。それは、雨上がりで澄んだ空気で輝く夜景にも劣らぬ美しさで――。
「伊鈴といられるなら、特別なことなんて望まないよ。出会った時よりも今日、今日よりも明日……伊鈴をずっと愛してる。永遠に俺の隣にいてほしい」
立花が想いを乗せて言葉を紡ぐと、また伊鈴の瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。
(すごく幸せなことなのに、すぐに返事ができないなんて……)
「前向きに考えてみて。俺と結婚するかどうか」
「はい」
「いい返事を待ってる」
立花は指輪ケースをそっと彼女の手のひらに乗せ、抱き寄せてから額にキスをした。