願わくは、雨にくちづけ
(煌さんは私の好きにしたらいいって言ってくれそうだけど、本当はどう思ってるんだろう)
彼はなにも言っていないけれど、きっと結婚するとなったら仕事は辞めるのが一番だろう。
でも、まだ辞めたくないのも本心なのだ。
「なに? もしかして立花家に嫁ぐの、気後れしてる?」
「うん……。まぁ、そんなところ」
悩み相談をしていても、食欲だけは別物。伊鈴も千夏も、焼き立ての本格的なマルゲリータピザにかぶりついた。
チーズがとろりと伸び、程よい酸味のトマトと香りのいい生バジルが爽やかで、薄生地がとても軽い。
「立花さんがどういう仕事をしていようと、彼を支えていくことが伊鈴の役目なんじゃない? 彼の家に入るとか、そういうのは一緒に解決していけるんじゃないかな。もっと立花さんに甘えて、頼ってみたらいいよ。今思ってることを吐きだして、それから返事をしてみたら?」
千夏の言葉に、ハッとした。
まだ始まってもなければ、返事もしていない未来のことを心配して、踏み出せずにいるなら、彼に打ち明けてみればいいのかと気付かされた。