愛と約束
少し声を荒らげたからか、喉が痛い。
お茶を持ってこようと腰を浮かし、台所に向かう。
「……ふぅ」
昔は、こんなことは無かった。
困ったように笑いながらも、弦刃は私を愛してくれた。
そんな弦刃が、変わった理由は?
「助けて、あゆ……」
もう一口、と、水を飲んだ時、背後から聞こえた声。
気配が無さすぎて、驚いたが……それ以上に、弱々しい声に私は驚いた。
「え?」
「何があっても、俺と居るって約束して。頑張るから、俺、守ってみせるから……」
「待って、弦。何の話かわかんない……」
後ろから、抱きしめられる。
その温もりは、どこか心細くて。
「母さんが……」
「……」
「会いに来たんだ」
シンクに落ちる、雫。
水道から漏れたそれが落ちる度、音を奏でる。
静まった、私たち二人の間に流れた沈黙のせいで、その音は大きく響く。
「おばさんが、ってことよね……?」
弦刃の産み親は、お金と引き換えに弦刃を捨てた。
そして、育ての母親は彼を虐待した。
彼にとって、私にとっても、母親というものは……親というものは、災厄でしかない。
「母さんが……お金をくれって……」
「……」
「俺を売ったのに、足りなかったんだと……」
弦刃は売られたことを知った時、とても荒れた。
ずっと、私はそばで見てきた。