愛と約束



「婆さんが、あゆにやった事だって、許せなかった。許せるはずもなくて、大切にできなくて、思うようにならなくて。こんなんだったら、あゆの告白に頷かなければ良かったと、何度も後悔したんだ……」


ぎゅう、と、腕に力がこもる。


「婆さんが死んで、漸く、あゆと幸せになろうと思ったのに……」


今度は、お母さん。


愛はくれないのに、無償の金をせびってくる。


そんなの、ただの金貸し機。


きっと、あの人たちは私たちをそんなふうにしか見ていない。


「あの人は、自分の願いを叶えるためならなんでもする……知ってるんだ。俺も昔、利用された。おかげで、俺は三億で取引された」


「……うん」


「嫌だ。あゆをそんな目に遭わせるのは……どうして、俺なんだ」


「うん」


「俺じゃなくてもよかったはずだ」


「……そだね」


なんで、どうして、何度問いても出てくるはずのない答え。


苦しみに耐えられずに溺れていくのなら、私もどうか、連れてって。


「兄さんが……」


「ん?」


「兄さんが、母さんを片付けてくれるって……」


「……」


「兄さんは心配性だから……。俺を守るって……でも、俺、これは自分で乗り越えなければならないと思うんだよ」


私が、好きな弦刃はね。


どんなに辛い目に合わされても、真正面から見てくれるの。


目を逸らさないの。


どんなに自分を傷つけるものが、相手でも。



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