愛と約束
『―弦、みーつけたっ』
家の影に、隠れる貴方。
『あゆ……』
『また、おばさんに何かされた?』
悲しそうに、笑った貴方。
『凄い怪我。頭から、血が出てるよ』
『物を、投げつけられたんだ。でも、平気だよ。慣れてるから』
『フフッ、あゆと同じ』
『あゆも怪我してるよ』
『そうなの。今日は包帯よ』
腕全体に巻かれた包帯の下は、ひどい青アザ。
『でもね、お兄ちゃんが守ってくれたから…』
『知佳さんが?』
『うん。お兄ちゃんの方が、ひどい怪我』
『心配だね』
『でもね、お兄ちゃん、笑ってた。「生温い」って』
『生温い?』
『うん。……どうして、あゆと弦のママとパパはあんなに怖いのかな。どうして、他の家と違うのかな』
隠れてた。
お兄ちゃんが、迎えに来るまで。
鬼から、逃げ切って。
『俺は……本当の子供じゃないから……』
『でも、吊戯さんはお兄ちゃん、でしょう?』
『本当の兄じゃないよ。あの人も、母さんに捕われた……傀儡だから』
『そっかぁ。生きるって、難しいね』
『それを言うなら、親子の方じゃない?』
『家族がいると幸せって、誰が言ったんだろう』
『先生は、嘘つきだね』
年がら年中、長袖ですごした幼少期。
それが、私たちの当たり前。
『そうだ!』
『え?』
『いつか、苦しくなって……逃げたくなったら、一緒に死のうよ!』
死ぬことが唯一の道で、
幸せだと、信じていた幼少期。
あなたがいてくれれば、死ぬことも怖くなかった。