愛と約束
でもね、きっと、死ぬことは寂しいから。
『そうだね。良い考えだ』
あの頃から、少し大人になって。
自分の力で、対峙して。
『少し怖いけど、二人一緒だったらできるよ!』
『その時は、知佳さんとかも誘う?』
『お兄ちゃん?―良いね!』
今度は、死ぬことをじゃなくて生きることを。
「……一緒に、生きようね。弦」
「うん」
「覚えてる?昔の約束」
「覚えてるよ。死ぬ約束」
「そうそう」
弦と握りあった、手。
死ぬことが、消えることが、一番の幸せだったあの頃は捨てて、私達は生きるための道を歩いていこう。
この手を、ぎゅっと握りあってさ。
「……大好きよ、弦」
「俺も、愛してるよ。歩」
永遠に―そう、命が続く限り。
『生きるって何?幸せって?』
首をかしげていた迷子は、
『あげる!これが、"幸せ”!!』
愛せる人を見つけて、大人になった。
愛されないのなら、もう要らないなんて……どうして、そんなことを思えたんだろう。
弦を失うことは、私の死を表すのに。
ごめんね、弦。
ごめんね、私。
死ぬことも生きることも罪ならば、
二人一緒に、生きていこう。
そして、一緒に死ぬんだ。
それが、私たちの幸せの形。
「一緒に、歩いていこう。この命が、尽きる日まで」
弦と、私の指が絡み合う。
「「約束」」
幼い日の約束のように、
―これからも、ずっと二人で。