愛と約束
別の優しさ



「峯田、大丈夫か?」


ご飯を食べる気にもなれず、軽くつまんでいると……現れたのは、彼氏の親友とも言える私の上司の瀬戸さんだった。


「はい」


「全然、食ってないじゃないか」


「最近、食欲がなくて。恐らく、夏バテかと」


「病院には行ったのか?」


「今度いくつもりですよ」


病院は嫌いだ。


何度も、孫を孕まないからと……連れていかれて。


そんなことをしていた彼氏の祖母は亡くなったから、少し、今は気分が楽。


それでも、病院への抵抗感はあって。


「弦のやろー、歩ちゃん放って……」


「あ、大丈夫です。仕事ですから」


―多分ね。


あまり、信頼してないけど。


「弦……桐崎くんも、忙しいんですよ」


「……弦って呼ばないのか?」


「呼ぶ資格、最近、失ってる気がして」


「なんでまた……」


私が微笑むだけにしていると、


「困ったことがあったら、いつでもうちにおいで。梢も喜ぶから」


「本当ですか?なら、お邪魔させてもらおうかな……」


梢って言うのは、私の親友。


こんなことを梢に相談していいのか悩んでいるうちに、時だけがすぎて。


こっそりの事だったし、きっと、弦は梢の旦那が親友の瀬戸さんだってことも知らないだろう。


あの人は、そんな人だ。


興味が無いんだよ。


私の周辺は、特に。


< 5 / 37 >

この作品をシェア

pagetop