愛と約束
***



「歩!」


「あ、梢……」


あれから、1週間。


元より、出張は2週間の予定だったらしく、弦は帰ってくることはなく、私は梢と久しぶりに出かけることとなった。


「馬鹿っ!」


開口一番、そう怒られて……


「私にも言わないなんて、なんで我慢してんの!」


そう、抱きしめられた。


強い力と、梢の涙。


まだ、自分を大切に思ってくれる存在に、胸があったかくなった。


弦と結婚すると信じて疑わない両親や、孫を渇望している弦の両親に相談できるはずもなく、私は悩んでいることを瀬戸さんとの結婚で寿退社してしまった梢にわざわざ電話してまで相談することも出来ず、結局、瀬戸さんから間接的に梢に伝わってしまったようで。


「匡史(タダフミ)から聞いて、びっくりしたんだからね!?」


「ごめんなさい……」


謝ると、


「歩が謝ることじゃないの!弦さんがいけないの!!」


梢は、怒った。


「あんなにも、歩を愛し……」


「ストップ!梢!」


「……だってぇ」


口元を覆われた梢は、瀬戸さんに怒る。


「あんなに歩を溺愛してるくせして、何が、レスよ。ふざけんじゃないって話でしょ」


「いやいや、弦にも色々あるってことで……」


「色々って、何よ?」


「それは―……」


「ねぇ、2人で何をコソコソ話してるの?」


コソコソ話してるけど、内容は全く聞こえなくて。


「よく分からないけど、2人とも、ありがとう。大丈夫よ。私は―……恋人同士だし、家を出ていこうと考えてるし」


「「ええっ!?」」


2人には驚かれるけど、もう、決めたことだ。


「うちの会社、副業も可能じゃない?だから、バイトをしながら、会社にもいって……」


「そんなことをしたら、歩の体が壊れちゃうよ!」


「アハハ……大丈夫。元気だけが、取り柄だし」


引っ越したりなんかしたら、きっと、お金とかも足りなくなる。


だから、働くの。


何も考えなくていいくらい、働くの。


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