彼女に落ちるまで~甘い運命 修一side
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彼女、『橋本 都』に出逢ったのは、約2年前。
元々の担当者から、引き継ぎを受けた時だった。
「橋本 都と申します。
羽田にはまだまだ及びませんが、精一杯担当をつとめさせていただきます。
どうぞ、宜しくお願い致します。」
深々とお辞儀をする女性。
顔は十人並み。体型はぽっちゃり。
でも、綺麗な角度で腰を折り、凛とした雰囲気を漂わせている。
顔をあげて俺をまっすぐ見つめる眸に、全く『色』…つまり、恋愛感情とか、俺を男として意識する気配がなく、驚いた。
自慢ではないが、初対面の女性は、大抵俺を見てうっとりする。
「…あの…?何か失礼を致しましたでしょうか?」
すぐ返答をしなかった俺を、不安そうな表情で見つめる彼女。
「いえ、失礼しました。
羽田さんの後任の女性ということで、もっと…そう、キツそうな女性を想像していたもので。
柔らかい雰囲気の方で、驚きました。 」
意識して冗談ぽく、俺は言った。
「改めまして、担当の三上です。
こちらこそ、宜しくお願いします。」
名刺を差し出しながら言うと、彼女は慌てて自分の名刺を取り出した。
「失礼いたしました、私から出さないといけなかったのに…!」
「ははっ、橋本、三上さんがあんまりイケメンだから、見とれてたんだろ!」
からかう羽田さんをちょっと睨んで、
「見とれていたのは本当ですが、イケメンさんというよりは、造形が完璧という意味です。課長、下世話ですよ!」
ちょっとよく分からない理論を主張して、彼女が名刺を差し出す。
仲の良い上司と部下だな。
羽田さんは、俺も尊敬できる人だ。
その人が可愛がっていて、次の担当に指名してきた人だ。
相応にできる女性なのだろう。
その時は、そのくらいの意識で挨拶を終え、彼女らを見送った。
でも、あまり期待はすまい。
女性担当は、俺と絡むと大抵問題を起こす。
俺はひとつ伸びをして、自分の部署に戻った──