彼女に落ちるまで~甘い運命 修一side
1-6
さっさと仕事を片付けて、同じ課の同僚にお疲れ様です、お先にと声をかける。
珍しく定時で上がる俺に、後輩がニヤけた顔でデートかと尋ねた。
友人と会うのだと言うと、とてもそうは見えないと言われた。
「そんなにウキウキした感じの三上さん、俺見たことありません。」
「そんなことないとないと思うけど。
俺、そんなに浮かれてる?」
──深々と頷かれてしまった。
言葉を失った俺に、後輩は呆れたような表情で、肩をポンポンと叩いた。
「いつも冷静沈着な三上さんが、意外ですね。
まあ、楽しんできて下さい。
聞くだけ野暮な気がしてきました。」
─そんなことないのに。変なやつ。
ペコ、と頭を下げて去っていく後輩の背中に、誰に聞かせる訳でもなく、一人呟いた。
気を取り直して鞄を持つと、俺もエントランスに向かう。
その足取りは、自分でも分かるほど軽かった──