闇夜に消えて

バッグを持ってドアに向かおうとした時、


「……ちょっと待って」


「え?」


彼は、何故か天井から垂れている長いひもに懐中電灯をくくりつけた。


その瞬間あたりが明るくなる。


彼の顔が少し見えた。



「その荷物、どうしたの?
旅行の帰り……ってわけじゃなさそうだね」


「え、えっと…」


「家出でもしてるの?」


なんて言っていいのかわからずに、こくりと頷いてみた。


「そっか」


さっきよりも穏やかな声でそう言った彼。


よく見ると、私よりも大きな荷物を持っている。


「あなたは?」


「俺?」
< 4 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop