闇夜に消えて
バッグを持ってドアに向かおうとした時、
「……ちょっと待って」
「え?」
彼は、何故か天井から垂れている長いひもに懐中電灯をくくりつけた。
その瞬間あたりが明るくなる。
彼の顔が少し見えた。
「その荷物、どうしたの?
旅行の帰り……ってわけじゃなさそうだね」
「え、えっと…」
「家出でもしてるの?」
なんて言っていいのかわからずに、こくりと頷いてみた。
「そっか」
さっきよりも穏やかな声でそう言った彼。
よく見ると、私よりも大きな荷物を持っている。
「あなたは?」
「俺?」