闇夜に消えて
それは、田辺くんの腕の中から出てきた白い猫だった。
「こら!」
彼は猫に向かって頬をふくらませた。
「かわいい……」
あ。
やば。
きこえちゃったかな?
ふともれた私の心の声。
「だろ。さっき道で拾った」
田辺くんは猫のことだと勘違いしてるみたい。
あなたのことを言ったんだけどね。
なんて、言えないけどさ。
確かに猫は可愛い。
犬よりも猫派。
その白猫は拾われたわりには落ち着いていた。