闇夜に消えて
「お前の名前は?」
「あ」
自己紹介の途中だったんだった。
「白河優月(しらかわ ゆずき)です。
15歳。よろしくね」
「あぁ。ついでにこいつの名前も決めるか」
田辺くんは猫の首をくすぐりながら言った。
「…………リン」
「いい名前だな」
社交辞令のその言葉。
嬉しくなかった。
『リン』
この名前は、キャバ嬢として働いていた母の、源氏名だから。
「リンって、鈴の音みたいだよな」
彼が何気なくいったその言葉にもドキッとした。
鈴は母のホントの名前。