守りたい ただあなただけを
「バス。テナー。アルト。ソプラノ。
そしてハグワール。
仲間達と各都市を回って調べたスポット調査結果での概算になるが、
この国のおよそ70%のイヌとネコが、
既に“Enza”ウイルスに感染している。」
「ということは・・・。」
「そんなイヌやネコ達と共に暮らす人々も、
ほとんどが“Enza”ウイルスに感染していると考えたほうがいい。
1年後かもしれない。
明日かもしれない。
この国はやがて大規模な“Enza”恐慌に襲われる。」
「・・・助かる術はないのですか!?」
私の言葉を聞き、リバル様はその身を包む白衣のポケットに手を伸ばした。
・・・2種類の錠剤・・。
「ようやく完成した。
仲間達と命を賭けて作り上げた、
“Enza”ウイルスのワクチン。
これを投与すればウイルスは体内で死滅し、
人々を救えるはずだ。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「リバル様・・・・・あなたは・・
あなたはこれ以上の感染拡大を防ぐ為に、
“イヌ・ネコ虐殺令”を・・・・・・・?
ハグワール国民を救う為にあのような命令を下したんですか・・・・?」
「・・・・・・・・・。」
「なぜですか!?
なぜ本当の事を国民に公表しなかったんですか!?
“Enza”ウイルスの脅威を説明して・・・。」
「説明してどうするつもりだ?」
「・・えっ・・・・。」
「カズマ。
お前は国民1人1人に、
“Enzaウイルス感染拡大防止の為に、
自分のペットを殺処分してください“
とお願いするのか?」
「・・・・・・・・・・。」
「“自分達が助かる為に家族同然のペットをその手で殺すか、
ペットと共にウイルスに犯されて死ぬか”
と選択させるのか?
ようやくワクチンが完成したが、
大量生成にはまだ時間が掛かる。
今後絶対的なワクチン不足問題が起こった時、手に入れたワクチンを、
“自分達が使うか、
ペットに与えるか”
を選択させるのか?
・・・・・そのような重き荷を民達に課せられるはずがなかろうが!!!」
・・・・こ・・・この人は・・・
「あなたは・・・だから・・・わざと暴君を演じてあのような振る舞いを・・・?」
「背負うのは僕1人で充分だ・・・。」