蒼い月と紅の灯火
『どうして! どうしてなの! 許せない、何もしていないのに自分達の都合だけで殺戮を繰り広げる人間なんて』
悲しくて、悔しくて、怒りで涙が溢れてくる。冬なのにとても顔が熱い。
里から離れると、里があったであろう方角から煙があがるだけだった。
記憶に焼き付いた里が燃える光景、仲間が撃たれ血を流し倒れていく様。
どれもこれも、一生消えることのないトラウマとして心に残る。
『寒い、どうして私達がこんな目に合わないといけないの。何もしていないのに』
お母さんとお父さんは、もう、きっと……。
『うっ……ひとりは、さみしいよ……だれか……』
とめどなく涙が溢れでる。さっき泣いたばかりなのに、それでもまだ涙はでてくる。枯れるということを知らないかのように。
泣いているうちに、いつのまにか雪が降ってきていた。
『寒いな、どこかで休もう』
近くにあった洞穴で休憩をとる。外は吹雪で真っ白でなにも見えなくなっていた。
『何で嫌なことはこうも続くの……』
いつの間にか眠っていて、吹雪もやんでいた。
『もう、大丈夫かな。取り敢えず進まないと』
歩いても歩いても、見えるのは白銀の世界。木々が淋しく立っているだけだった。
『どこいっても同じ景色、つまんないな』