蒼い月と紅の灯火
「はいはい、何食べる? あ、葡萄あるよ、あげる」
と言って棚から出した皿に一房おかれる。
「雑……」
「ごめんねー、もうすぐ差し入れ来るからそれまで食べてて」
「料理が出来ないと言うわけではない…?」
「朱里はできるの?」
「人化すれば出来ますよ」
「そっかぁ、いいお嫁さんだ」
ふにゃっと笑いながら頭を撫でられる。それがなんだかムカついたので噛みつく。
「痛いよ!?」
「ごめん、なんかムカついたから」
「朱里、そういうとこあるんだね」
「この葡萄美味しい!」
「美味しいならいいんだ、美味しいなら……」
蒼兎のくれた葡萄は里でも好きで食べていた物だった。里の事を思い出して涙がポロポロと零れてくる。
「朱里……?」
「何でもないの……」
口ではそう言うが涙はそう簡単に止まってくれない。
それを見た蒼兎は、なにも言わずにただ頭を撫でてくれた。
「ごめんなさい、少し楽になった」
「それならよかった、ほら向こうで休みな」
「ありがとう」