蒼い月と紅の灯火
「まぁ、でも本当に可愛いよな」
「は……?」
「お前と違って恋愛感情じゃないから!」
「え、そうじゃないと沈めるよ?」
「あれ、蒼兎ってこんな物騒だっけ」
それなら安心、出来るわけない。
近い、朱里に近いんだよ!
兄さんの言う通り僕は嫉妬深いかもしれない。
「でもさ、兄さん」
「ん?」
「兄さんもいくら恋愛感情じゃなくても、これ寝れなくない?」
「そりゃ、俺だって……、一応男だし」
きっちり両手で掛け布団を掴んで仰向けで寝ている。
さっきから悪戯しても起きないし。
なんて子だ。
迷いながらも朱里と距離を更に縮める。
やっぱり、この匂いは大好きだ。
朱里がわかるから。
昔から無邪気で優しくて、強かった。
そんなことを考えていたら段々と眠気が襲ってきた。
そして、僕の意識は薄れていった。
最後に兄さんの、呆れたような声が聞こえた。
「寝れるのかよ……」