蒼い月と紅の灯火
しばらく眠っていると物音で目を覚ました。
(誰か、来た……?)
耳だけを立てて注意を向ける。
「蒼兎ー! 開けてくんねー!?」
うるさい、とてつもなくうるさい。耳が痛くなる。
騒がしいということは、蒼兎のお兄さんだろうか。
「兄さん、うるさい、お客さん寝てる」
(お客さん……)
何故か心が痛んだ、チクチクというより、ズキッと……
優しくしてくれたのに、突き放すような、そんな感じがした。
「客だと!? ぼっちで優男でヘタレなお前に!?」
「兄さん、怒るよ僕」
「んで? 誰だ」
「兄さん、食材ありがと、ほら帰って」
「冷たい! 語ろうぜ!」
聞いているだけで笑いが込み上げてくる。本当に仲が良いんだろうなと思えた。
面白いくらい蒼兎はお兄さんに冷たいけど。
(挨拶、くらいしたほうがいいよね)
流石に狐の姿のままではあれなので、人の姿になることにした。
蒼兎のお兄さんなら大丈夫だろうと。