蒼い月と紅の灯火
【蒼兎side】
やっぱり君のことが気になってしまう。
自分で兄さんのとこに追いやったくせに。
兄さんの家に来てしまった。
会わせる顔なんて、ないのに。
ガサッ。
「やばっ」
物音を立ててしまったけれど、朱里は気にする様子がない。
というよりは、寝ていて気づいていないのか。
「朱里……」
近づいても起きる気配はない。
「ほんと、可愛いな」
白い肌に、桃色の小さなふっくらとした唇。
母親に似た雪のような純白の髪。
今は閉じているが宝石のような紅の瞳。
「君は、本当に忘れてしまったの?」
幼い頃、よく遊んでいたのに。
昔の無邪気さは今も残っていて。
可愛いから綺麗になっていて。
他の男と関わっていないみたいだけど、それでも。
「疲れたろうな、僕のせいで」
朱里の頭を撫でる。
さらさらとして手触りがいい。