蒼い月と紅の灯火
「ん……?」
朱里の首になにかある。
細い白い首に、髪の毛に隠れて見える赤。
そーっと首筋をなぞるように髪をどける。
「は……?」
赤い、痕。
これは虫刺されでも何でもない。
これは、確実な、キスマーク。
「あのくそ兄貴……」
自分のなかで何か黒いものが渦巻いている。
兄は別に女遊びがあった訳じゃない。
だからこそ、まずいんだ。
朱里は、兄に惹かれているだろうか。
それともこれは兄が勝手にしたことなのか。
だとしても、嫌だ。
僕は朱里が出会った頃から大好きなんだ。
兄さんも同じだろうけど。
兄さんは好意はないそぶりを見せる。
だけど、弟の僕にはそんなもの、通じない。
兄さん、僕に遠慮するのをやめてくれたのは嬉しい。
でもね、今更……。