蒼い月と紅の灯火

「おーい、朱里ちゃん?」




「あ、ごめんなさい。何でもないです」




「そう? ならいいけど」




ニヤニヤしながら私のことをみてくる。
率直に気持ち悪い。




そんな朔夜さんは無視してご飯を食べる。
でも、そうなのか。




やっぱりおかしいのかな。
蒼兎だったら、嬉しいのに。




嬉しい、それは、どうして?




「蒼兎……だったら、な」




「なんで、蒼兎の名前がでてくるの?」




蒼兎の話になると、途端に怖くなる。
二人だと楽しそうで、私だけだととても優しくて、それなのに、どうして、私だけの時に、蒼兎のことになるとそういう顔になってしまうの?




「いえ、男女が一緒なのおかしいのかなって」




「朱里ちゃんは蒼兎だったらいいの?」




「え?」




「そういう意味じゃないの?」



「あ、いや、その……」




そうだ、私は蒼兎だったらいいのになと思ったんだ。




だって、蒼兎といる方が楽しいんだもん。

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