蒼い月と紅の灯火
「どうして、蒼兎が止めるの?」
「朱里ごめん、僕は……」
「きゃっ!?」
術によって縛られる。
蒼兎がこんなこと出来るなんて予想もしていなかった。
「蒼兎!」
「ごめん!」
泣きそうな顔で背を向けて走っていく。
そのときに、少しだけ見えたんだ。
綺麗な、蒼い瞳が。
「あ……!」
蒼い瞳。
幼い頃に遊んだあの兄弟。
兄は銀髪に紫の瞳。
弟は銀髪に蒼の瞳。
やっと、思い出した。
忘れていたという事がおかしいくらいに。
朔夜さんと、蒼兎だった。
「二人だったんだね、あの兄弟は……」
蒼兎が私を避けている理由も今わかった。
私の里が襲われたのは、集落で見つかったから。
銀髪の子供が。
それが蒼兎だったんだろう。
だって、いつだか蒼兎はずっと泣きじゃくっていて、母に慰められていたから。
だから、父もあの時分かっていたんだ。
人間が襲ってくると。