Ｇod bless you！～第１１話「ヒデキとハルミ」

〝海川ユウタ〟

その日の朝礼は始業式も兼ねていた。
いつものように校庭に、男子と女子が出席順に平行して並ぶ。
右川は、女子列の１番前。名前順で言えば本当は２番目であるが、１番の阿木が朝の朝礼で伝達事項を読み上げる事があり、今日のように生徒列に並べない時、そういう日は右川が自動的に１番前になる。
俺は、本当なら男子列の前から３番目だ。
阿木と同じ理由でいない事もあるが、議長と言う曖昧な立場に甘んじて、特に何も無ければクラスの男子列に並ぶ。
順番に並ぼうとした所、背が高くて目障りだという理由でまた永田に責められ、またまた後ろまで下がった。
その昔、元カノと朝礼で仲良く隣同士話していたのがまだ記憶にあるんだろう。右川と仲良くやられてたまるかという陰謀が働いているような気もする。（考えすぎ？）
見ていると、右川は偶然隣り合った男子と何やら楽しそうに話していた。
後ろまで、にゃははは！と笑い声が聞こえてくる。当然、吉森先生に注意された。ざまみろ。
……その男子。
海川ユウタ。
俺は普段からあんまり話した事がない。去年の修学旅行の際、たまたま関わった事はあったが、それ以降、本当に同じクラスなのかと疑うほど接点が無かった。ただただ、存在感の薄い男子である。いやその存在感たるや、そいつの小太り気味の体型を言えば、まぁまぁ有るのだが。
不思議な事だが、右川は男子でも女子でも、ああゆう真反対のタイプに縁があるな。
右川は振り返った。だがその視界に、俺の存在は留まらないようで。
「小倉優香ってさ、胸デカいと思う？」と、後ろの進藤ヨリコに投げかけた。
「デカいじゃん。どうみても。カズミちゃんよりは」
「てか、ウエストが細いから胸がデカく見えるだけって事もあるじゃん」
「ウエスト太くて巨乳って……デブじゃん。そんなの誰かいる？」
そこで２人の視線が１つに集中する。
「アイドルじゃないけど、居たね」
「居た。居た」
その男子が、「２人とも、それって僕に対するセクハラだよ。訴えるよ」と、おどける。
「違げーよ」と右川からポコポコ喰らう。「そーだよ。これはセクハラじゃないもーん」と、進藤がおどけて一緒にポコポコする。
「それ、普通に暴力だからっ。訴えるよっ」と、大喜びの男子。
それが〝海川ユウタ〟という男子。