エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
1.社内恋愛のセオリー
見慣れない男の人の部屋。
床に落ちているふたりぶんの服。
二日酔いで痛む頭。
かすかに肌に残る、甘い情事の記憶。
――これは夢だ。夢に違いない。フルフル首を振って、またベッドの中に戻る。
ぎゅっと目を閉じて感覚を遮断しようとした矢先、隣に寝ていた男の腕がにゅっと伸びてきて、私の頬に手を置いた。
びくっと肩が跳ね、おそるおそる目を開けてみる。
そこにはやっぱり、予想通りの人物の顔があった。
うううう……残念ながら、夢じゃなかったみたい。
「おはよう、もう起きてたんですね」
寝起きのとろんとした瞳。その色気を引き立てる、左目の下の泣きぼくろ。
まるで恋人のように甘い眼差しで私を見つめてくるそのひとは、恋人でもなんでもない男性なんだけど……他人かと言えばそういうわけでもなくて。
「お、おはようございます、風間部長……」
誰より社内恋愛を毛嫌いするこの私が、どうして会社の、しかも同じ部署の上司とこんなことになってしまったのか。
カーテンの隙間から差し込む爽やかな朝の陽ざしの中、私は必死になって、昨夜の記憶を手繰り寄せた。