エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
そう思って俯いた視界の中で、見慣れないパンプスがそばにあることに気付く。
同時に気付いたらしい露子とともに顔を上げれば、私たちの座るベンチの正面に、見たことのない女性が立っていて。
「ええそうね。それが賢い選択だと思うわ」
勝ち誇ったようなその言い方で、瞬時に彼女が誰なのかを悟った。
「百合……さん?」
「ええ。風間一誠の婚約者のね」
艶やかなブラウンのストレートロングをサイドに流した上品な髪型に、体のラインを強調するような、タイトなワンピース。色鮮やかな濃いめのメイクが映える、派手な顔立ち。
どこからどう見ても美しい彼女に、敗北感を覚えるなという方が無理だった。
一誠さんの隣に並んでお似合いなのは、間違いなく彼女の方だ。
「あなたが巴さんね? どんなに魅力的な女性なのかと思ったら、中の中じゃない」
「……っ」
中の中……その評価に別に異論はないけど……いきなり失礼なひと。まぁ、私のことは一誠さんに近づいた女ってことで、憎らしいのかもしれないけど。
悔しいけど、百合さんの美しさを前に委縮して黙り込むしかない私に代わって、露子が隣で声を張り上げた。