エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「そういえば、聞くのを忘れていましたが、今、お付き合いしている男性は?」
そしてなんでこの人は、私のプライベートをいちいち探ってくるの。
「……いません」
あまり深く考えず、馬鹿正直に答えてから後悔した。
もしかして、彼氏がいると言えば帰してもらえた……? だとしたら痛恨のミスだ。
「ま、恋人がいたって今さら帰しませんけどね」
タクシーの走行音に混じって、不吉なセリフを呟いた部長の顔を凝視する。
穏やかそうな微笑の中に、腹黒いものが見え隠れ……しているような気がする。
「部長こそ、いないんですか? ……恋人とか」
「いません。……今は」
前を向いたまま、素っ気なく答えた部長。
今は……ということは、失恋したばかりなのだろうか。ふうん、こんなにイケメンでもフラれるんだな。あっ、性格に問題ありそうだもんね。
勝手に失礼な解釈をして、それからはお互い黙っていた。
十数分で到着したバーはビルの地下にあって、カウンター席しかない小さな店だけれど、シックな内装で落ち着けそうな雰囲気だ。
へえ……、こんな素敵なお店を知っているなんて、やっぱりモテる男性は違うな。