エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~


「そういえば、聞くのを忘れていましたが、今、お付き合いしている男性は?」

そしてなんでこの人は、私のプライベートをいちいち探ってくるの。

「……いません」

あまり深く考えず、馬鹿正直に答えてから後悔した。

もしかして、彼氏がいると言えば帰してもらえた……? だとしたら痛恨のミスだ。

「ま、恋人がいたって今さら帰しませんけどね」

タクシーの走行音に混じって、不吉なセリフを呟いた部長の顔を凝視する。

穏やかそうな微笑の中に、腹黒いものが見え隠れ……しているような気がする。

「部長こそ、いないんですか? ……恋人とか」

「いません。……今は」

前を向いたまま、素っ気なく答えた部長。

今は……ということは、失恋したばかりなのだろうか。ふうん、こんなにイケメンでもフラれるんだな。あっ、性格に問題ありそうだもんね。

勝手に失礼な解釈をして、それからはお互い黙っていた。

十数分で到着したバーはビルの地下にあって、カウンター席しかない小さな店だけれど、シックな内装で落ち着けそうな雰囲気だ。

へえ……、こんな素敵なお店を知っているなんて、やっぱりモテる男性は違うな。


< 12 / 188 >

この作品をシェア

pagetop