エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
驚き過ぎて、抵抗もできずにただ瞬きを繰り返す。でも、段々と自分の身に起きていることを理解し始めると、脳裏に一誠さんの顔が浮かんで、胸に鈍い痛みが走った。
もう、関係ないのに……前に彼と、“仕事以外では成田くんと関わらない”と約束したことを、思い出してしまったのだ。
「だめ、っ……」
我に返った私は顔を背け、椅子のキャスターで後ろに下がり、成田くんと距離を取った。
「どうして、こんなこと……」
言いながら、睨むように彼を見つめたけれど、成田くんは動揺することなく、再び胸ポケットから取り出した眼鏡を掛けると、まっすぐな瞳で私を見つめてくる。
私はただならない空気を感じ取って、どくんどくんと鼓動が速まる。
なんだろう、嫌な予感がする。だってこんなのまるで――。
「汐月さんのことが、好きだから」
次の瞬間、凛とした声で、私の思い描いていた通りのことをハッキリと宣言した成田くん。
けれど、私は何と言ったらよいのかわからずに、唇を微かに震わせることしかできない。
だって、新入社員の男の子にとって、二十七の女子社員なんておばさんっていうか、全然そういう対象だとは思ってなかった。
それに何より、私の心にはまだ……。