エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

「いつも汐月さんのことを見ていればわかります。それに、部長も俺のこと気に食わないような態度だし……。でも二人、ちゃんとした恋人同士にも見えない。事情はわかりませんけど、俺には部長のワガママに汐月さんが付き合わされて、弄ばれているようにしか見えなくて」

目の前で真摯に語り掛けてくる成田くん。

でも、私は彼の気持ちより、彼の言った『部長のワガママ』『弄ばれている』といった言葉に傷ついていた。

一誠さんにも事情があったとはいえ、はたから見たらそれが真実だろう。

正式な恋人にしてもらえず、別れを告げても特に返事もなくて。

なのに、なんで私はまだこんなに一誠さんが好きなの……?

苦しい気持ちがどんどん膨らむのと同時に、私の脳裏にふと蘇ったのは、露子の声だった。

『きっと次は、ちゃんと巴のこと想ってくれる人が現れるよ。あんな男のことは早く忘れな?』

露子は別に、それが成田くんだとは言っていない。

でも、こんなにもまっすぐな“好き”をもらって……。

心が弱っている今、それに手を伸ばさずにいられるほど、私、強い人間じゃないよ。



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