エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
ぽつりと彼の下の名前を呼ぶと、ガバッと身体を離した彼がはじける笑顔を向けてくれた。
感情のわかりやすい彼は可愛いし、何より安心できるから、きっとうまくいくよね。
何でも秘密主義で、最後まで本心を見せてくれなかった誰かさんとは違って――。
唯人くんの腕の中でそんなことを思って、けれど途中で思考を閉じた。
一誠さんのことはもういいじゃない。今は自分を抱きしめてくれている人の優しさに、体温に、集中しよう。
二人きりのオフィスで、私と唯人くんは長い間、そうして抱き合っていた。
*
ゴールデンウィークも後半の連休に入ると、私の心もだいぶ落ち着いてきた。それはたぶん、他でもない唯人くんのおかげ。
彼は他愛もないことでマメに連絡をくれるので、自然と一誠さんのことを思い出す機会が減り、穏やかに過ごすことができたのだ。
彼とのことは、休み中に電話で露子にも報告した。
『やっぱりね~。成田くんが巴を好きなのは見ればわかるし、むしろやっと告白したかって感じ』
露子はまったく驚くことなく、その反応に私の方が驚いてしまった。