エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「え、気づいてたの?」
『わかりやすいもん、彼。でもよかったじゃん。部長のことなんか忘れて、今度こそ、幸せになりなよ?』
「……うん」
いつでも私の幸せを願ってくれる露子の友情にありがたみを感じつつ電話を終えると、入れ替わるようにに唯人くん本人から電話があった。
ゴールデンウィーク最後の休日にデートをしようというお誘いだったので、私はもちろん快く了承した。
初めてのデートだからと緊張している唯人くんは、間が持つようにと映画を見ようと提案してくれ、私も特に異存はなかったけれど、どうしても蘇ってしまう記憶があった。
見たくもないスリラー映画で怖がる私を笑う、悪趣味なあの人との記憶。
なんてひどいデートだと思っていたら、誰もいなくなった映画館でいきなり甘いキスをされて――。
……ダメ。忘れなさい、巴。
私は感傷に浸りそうになった自分を押し隠し、電話の向こうの彼に『楽しみにしてるね』と、返事をしたのだった。