エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
そして迎えた当日。天気は気持ちのいい快晴。
一誠さんとのデートと違って、あれこれ服装を悩むことなく、待ち合わせ場所に向かうまでも気楽だった。
私よりちょっと遅れて到着した唯人くんが走ってきてくれる姿は犬のようで可愛らしく、心が和んだ。そうして、私たちは仕事の話や学生時代の話をしながら、目的の映画館へ向かった。
「どれにしよっか」
「そうですね……色々やってるなぁ」
映画館に着くと、とりあえず、ロビーの壁にならんだポスターや電光掲示板を見ながら、見たい映画を相談する。
その中で唯人くんが目を止めたのは、ポスターの真ん中に可愛い子犬が映っているものだった。
「あ、これ見ませんか? 犬のやつ」
「うん、見たい見たい。絶対感動するよね」
うん……大丈夫、ちゃんと楽しい。誰かさんと違って、唯人くんとは見たいジャンルの趣味も合うしね。
私はことあるごとに、唯人くんを“彼”と比べる自分がいることには気づいていたけれど、それは前より幸せになりたいからであって、別に彼に未練があるとかそういうわけではない。
そう、誰にともなく心の中で言い訳した。