エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「足元、気を付けてくださいね」
「うん、ありがとう」
スクリーンの暗がりの中で、唯人くんは席まで私の手を引いてくれた。二人の間には、一緒に選んだキャラメル味のポップコーンが置かれ、甘い香りが漂う。
予告が流れる間に食べようとしたら唯人くんの手とぶつかって、照れくさそうに笑った彼の笑顔に、“これこれ。このくすぐったさが映画デートだよ”と、内心呟いた。
唯人くんとなら、教科書通りの恋愛が思い描ける。
きっとこうやって平凡なデートを重ねて、三年くらい付き合ったら、プロポーズされて……それが、私の幸せな未来に違いない。
「いやー、可愛かったですね」
「うん。実家の犬に会いたくなっちゃったよ」
その後、近くのイタリアンレストランでパスタを食べながら、映画の感想を言い合った。
日当たりのいい窓際の席からは、休日でにぎわう街並みが見える。
ホントに、平和なデート……。穏やかな気持ちでパスタをほおばっていたら、唯人くんがなにげなくこんなことを言う。