エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「フレブルでしたっけ? いつか、俺も会いたいな。汐月さんちの犬」
たぶん、唯人くんは深く考えず話しているんだろうけど、いつか実家に挨拶に来るつもりがあるのかなと、ちょっとドキッとした。唯人くんと歩む未来が、現実味を帯びた気がして。
「きっと、犬好きの唯人くんのこと、歓迎するよ」
「だといいな」
微笑む唯人くんと見ながら、私は無意識にまた“これでいいんだよね”と自分自身に確認していた。
楽しい時間なのに、どうしてそんなことを思うの? これでいいに決まってるじゃない。
むしろ、一誠さんに惹かれていたという“間違い”を、正している最中だ。こっちが、幸せへの正しい道よ、巴。
胸の内でそう言い聞かせていると、テーブルの上にあった唯人くんのスマホが振動した。
画面を確認した唯人くんが、ほんの少し表情を硬くしたような気がして、私は胸に微かな違和感を覚える。
「電話?」
「いえ……でも、ちょっと電話してきます」
「うん? わかった。行ってらっしゃい」