エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
感心しながらキョロキョロしていると、カウンターの向こうでグラスを磨いていた店主らしき初老の男性が、部長を見てにこやかに会釈をした。どうやら部長はこの店の常連らしい。
「いらっしゃいませ、風間様。今日は可愛らしいお嬢さんをお連れですね」
「ええ。この子は部下……兼、恋人候補です」
部長がハイチェアに腰掛けながら私を紹介し、どうもはじめましてと頭を下げかけて、「ん?」と固まる。
今、コイビトコウホと聞こえたような……?
私は呆気にとられ、説明を求めるように部長を見る。しかし彼は私でなく店主に向かって、こんな爆弾発言を投下する。
「というわけで、今夜は彼女をお持ち帰りするつもりなので、適当に強めのカクテルを作ってもらえます?」
こ、この上司……平然と何言っちゃってるんですか?
「かしこまりました」
ちょっと、かしこまらなくていいですっ!
こちらに背を向け、棚に並んだ洋酒の瓶を物色し始めた店主に、私は慌てて弁解する。