エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
席を立ち、レストランのドアを出て行った彼を、窓からのぞく。
どうしたのかな。電話で返事しなきゃならない急ぎの用? でも、来たのはメールかラインっぽかったけど。
唯人くんを待っている間に私はパスタを食べ終わり、なんとなく手持無沙汰でいたら、ようやく彼が戻ってきた。
「おかえりー。唯人くんの、冷めちゃったね」
「すいません、汐月さん、俺……」
「ん?」
いつまでも席に着かず、深刻そうな顔をする彼に、嫌な予感がすると思ったそのとき。
「今日は、帰ります。これ、置いてくので、汐月さんはゆっくりケーキとコーヒーでも召し上がってください」
ポケットから財布を出し、その中から五千円札を抜いた彼が、それをテーブルに乗せる。
え? え? どういうこと? 帰るって……私を置いて?
「どうしたの? ご家族に何かあったとか……?」
「いえ……ホント、すみません!」
唯人くんはそう言って、勢いよく頭を下げた。
いや、謝らなくていいから帰る理由を……と尋ねる前に、彼は逃げるようにレストランを後にしてしまう。
ちょっと……一体、どうなってるの?
残された私はぽかんと口を開け、彼の出て行ったドアをしばらく見つめていた。