エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

席を立ち、レストランのドアを出て行った彼を、窓からのぞく。

どうしたのかな。電話で返事しなきゃならない急ぎの用? でも、来たのはメールかラインっぽかったけど。

唯人くんを待っている間に私はパスタを食べ終わり、なんとなく手持無沙汰でいたら、ようやく彼が戻ってきた。

「おかえりー。唯人くんの、冷めちゃったね」

「すいません、汐月さん、俺……」

「ん?」

いつまでも席に着かず、深刻そうな顔をする彼に、嫌な予感がすると思ったそのとき。

「今日は、帰ります。これ、置いてくので、汐月さんはゆっくりケーキとコーヒーでも召し上がってください」

ポケットから財布を出し、その中から五千円札を抜いた彼が、それをテーブルに乗せる。

え? え? どういうこと? 帰るって……私を置いて?

「どうしたの? ご家族に何かあったとか……?」

「いえ……ホント、すみません!」

唯人くんはそう言って、勢いよく頭を下げた。

いや、謝らなくていいから帰る理由を……と尋ねる前に、彼は逃げるようにレストランを後にしてしまう。

ちょっと……一体、どうなってるの?

残された私はぽかんと口を開け、彼の出て行ったドアをしばらく見つめていた。


< 130 / 188 >

この作品をシェア

pagetop