エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

しかしすぐには返事が来ず、寝てるのかな……となんとなく寂しくなりながら、スマホをバッグにしまう。そこでやっと、先にエレベーターに乗っていた人物の姿に気が付いた。

「一階ですか?」

「あ、はい。そうです……」

ボタンの前に立つ長身は、久々に近くで見る一誠さんだった。

片手をポケットに入れて立っているだけなのに、イケメンオーラが半端ないな……いや、別に未練があってそう見えるわけじゃなくて、あくまで客観的に彼の容姿が整ってるってだけだよ?

心の中でそんな言い訳をしつつも、斜め後ろからじっと彼を見つめてしまう。

シミュレーションとはいえ、こんな素敵な人とお付き合いできたことを、幸運に思うべき? なんて……そんな風に割り切れたら楽なんだけどな。

一誠さんに聞こえないように小さくため息をつき、階数表示のパネルに視線を移す。エレベーターが動き出し、ふわりと足元が浮く感覚がしたそのときだった。

建物の外で、突如バリバリ!と激しい雷の落ちた音がした。

その直後、足元ががくんと揺れてエレベータは止まり、ふっと視界が暗くなる。

「えっ?」

なに? 急にエレベーターが止まった……!?

「停電……のようです」

一誠さんが呟くのと同時に、非常用の明かりがパッと点いた。とはいえ、普段の照明よりは暗い。真っ暗よりはましだけれど、エレベーターは依然止まったまま。


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