エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「ありません」
そのひと言が合図になったように、一誠さんが唇を重ねてきた。
ただの上司と部下に戻ってからまだ一週間程度。けれど、お互い、あなたが足りなくてたまらなかったと伝え合うように、深い口づけを繰り返す。
一誠さんは段々と足取りがおぼつかなくなった私を壁の方へと追いやり、背中をもたれさせて、またキスを再開させる。
息が苦しいのは、彼が息継ぎをさせてくれないからなのか、エレベーター内の酸素が薄くなってきたのかわからない。
でも、一誠さんに甘い口づけをされながら、気を失うのもいいと思った。
頭の中が熱く蕩けて、恍惚としながらキスに酔いしれていたら、一度唇を離した彼が、なぜかこんなことを言った。
「……巴。シミュレーションは、終了です」
突然告げられた関係の終わりに、火照っていた頭も体も、一瞬にして冷静になる。
終了……? うそ、一か月の約束にはまだ早いのに……。私、まだ一誠さんと一緒にいたいよ。
「……やです、なんでっ」
縋るように彼のスーツをつかむ私に、彼は慈しむような視線を向けた。
「慌てないで、巴。つまり、きみに本気になったということです」
え……? ちょっと待って。もしかして終わりって、お別れの意味じゃなくて。