エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

「……なんか変なこと言いました?」

「いえ、シミュレーション時代はもうちょっと受け身だったような気がしたのですが、いざ恋人になるときみは結構恥ずかしいことを言うんだなと」

冷静に分析されると、急に恥ずかしくなって肩をすくめた。

そ、そういえば……私、さっきからちょっと舞い上がり過ぎかも?

「すいません……恥ずかしい奴で」

「いえ、うれしいんです。それに、やっぱりきみを選んでよかった。何の打算も駆け引きもない素直な巴に、これからもそばにいて欲しい」

優しい瞳に見下ろされ、胸がじんわり温かくなった。

「一誠さん……」

どうしよう、こんなに幸せでいいの? 私……。

「さて。今夜も本当はずっと一緒にいたいけど、明日は早いし、今夜は送ります。出張が無事終われば、またゆっくり二人の時間を作りましょう」

「はい。まずは頑張りましょう、出張」

つないだ手をぎゅっと握り直し、星がきらめく夜空の下をふたり寄り添って歩く。

もう、私たちは偽物じゃない――。

その事実さえあれば、私と一誠さんの関係はこの先何も問題なく進んで行くのだと、私は単純に信じていた。



< 144 / 188 >

この作品をシェア

pagetop