エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「……なんか変なこと言いました?」
「いえ、シミュレーション時代はもうちょっと受け身だったような気がしたのですが、いざ恋人になるときみは結構恥ずかしいことを言うんだなと」
冷静に分析されると、急に恥ずかしくなって肩をすくめた。
そ、そういえば……私、さっきからちょっと舞い上がり過ぎかも?
「すいません……恥ずかしい奴で」
「いえ、うれしいんです。それに、やっぱりきみを選んでよかった。何の打算も駆け引きもない素直な巴に、これからもそばにいて欲しい」
優しい瞳に見下ろされ、胸がじんわり温かくなった。
「一誠さん……」
どうしよう、こんなに幸せでいいの? 私……。
「さて。今夜も本当はずっと一緒にいたいけど、明日は早いし、今夜は送ります。出張が無事終われば、またゆっくり二人の時間を作りましょう」
「はい。まずは頑張りましょう、出張」
つないだ手をぎゅっと握り直し、星がきらめく夜空の下をふたり寄り添って歩く。
もう、私たちは偽物じゃない――。
その事実さえあれば、私と一誠さんの関係はこの先何も問題なく進んで行くのだと、私は単純に信じていた。