エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
8.運命のいたずら

出張一日目に訪れた、栃木県の小学校。最初の授業は、その五年生が相手だった。

「――というわけで、これらの食材から、炭水化物、たんぱく質、脂質、そしてミネラルとビタミンをまんべんなく摂取することが大切というわけです」

教室のあちこちから、「へえー」とか「知らなかった」とか、小学生らしい素直な反応が聞こえる。黒板には、私と露子と唯人くんの三人の努力の結晶、食材のぬいぐるみが磁石を使って張り付けられている。

そして、先生として堂々と授業をしている姿もサマになる、素敵なお方は言うまでもなく、私の彼氏、一誠さんである。

今日の相手は小学生だから心配ないけど、中学生や高校生だったら危なかった。だってこんな先生いたら、惚れるって、絶対……。

私は自分の受け持つ裏方仕事を黙々とこなしつつ、ときどき一誠さんの先生姿にぽうっと見惚れた。

「先生、質問」

「はい、どうぞ」

「……ミミズって、炭水化物なの?」

坊主頭のどこかひょうきんそうな男子が、黒板の一点を指さしながら、不思議そうな表情をしている。



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