エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「ミミズ……? ああ、もしかしてこれですか」
彼の指さす方を振り返った一誠さんが、黒板からひとつの教材を剥がして、その出来栄えに苦笑した。
「……確かに、ミミズですねえ」
「だろ?」
「すみません、たぶんこれを作った人は“パスタ”のつもりだったのだと思います。それなら、炭水化物で問題ないですよね?」
「なんだーパスタか。ぜんっぜん見えねえ~」
ひょうきん男子の露骨なリアクションに、クラス全体がくすくす笑いに包まれた。
作った人誰なんだろう? 私でももっとうまく作れる~みたいな女子の声もする。
……すいませんね。そのミミズ、私が作りましたよ。
お皿を模したフェルトに、ナポリタンを意識したオレンジ色の毛糸を適当にくっつけただけだけど、自分的には“結構パスタに見えるんじゃない?”と自信作だったのに……。
私は自分の不器用さを呪い、心の中で人知れず涙を流した。
そんなちょっと切ない事件(?)はあったものの、一誠さんはソツなく授業をこなして、一日目の学校をすべて周り終えることができた。
授業の最後に提出してもらった感想文を見る限り、今回の授業で伝えたかった“エナジードリンクは安易に口に入れていい物じゃない”という私たちのメッセージも、小学生たちはきちんと受け取ってくれたようだった。