エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「社、社長! どうしてこちらに……?」
ガタッと席を立って焦りながら主任が問いかけるけれど、社長は彼に返事を返すことなく、ゆっくり首を動かして私を静かに見据えた。
「汐月巴くん。きみに用があってね」
「えっ……私……ですか?」
まさかのご指名に、社長の登場で高まっていた緊張がさらに増して、心臓がどくどく鳴る。
いったい何の話……? ビール飲んじゃったけど、平気……?
「五分……いや、三分で終わるから、ちょっと店の外へ来てくれないか?」
「は、はい……私は、構いませんけど」
そう言いながらも、ちらっと一誠さんの様子を窺う。彼の視線は社長の方に向けられていて、睨むような、それでいて不安げな、揺れた瞳をしていた。
社長もそれに気づいていると思うけれど、素知らぬ顔で私を外に促した。
三分で終わる話だと言われても、悪い予感しかしない……。気持ちが重くなるのを感じながら、社長の後について店の外に出た。
するとそこには、社長が乗ってきたと思われる、黒塗りのハイヤーが一台停まっていた。